イギリスNPOにて就職する

先日ようやく、ボランティアしていたNPOにて正式にスタッフになることができました!

 

以前から、他の団体も含めて何度かアプリケーションを出していたものの、とにかく書類が通らず、撃沈・・・。外国人・関連する経験なし・イギリスで職歴なしの三重苦。私が採用する側なら採用しないよな・・と思ってほぼ諦めていました。

 

ですが。数ヶ月マジメにバックオフィスのボランティアに通い続け、思いが実ったのか、ある日突然HRマネージャーから「1ヶ月ホリデーに入ってしまうスタッフのカバーをして欲しい」との連絡が。時給は払われるとのことで、短期契約ではありましたが初めてのpaid jobをスタートしました。

 

仕事内容は、ケースワークのため社内外からのありとあらゆる言語の通訳リクエストを受け、手配するという役割です。アラビア語ベンガル語、ペルシア語、この辺が多いですが、それ以外にもルーマニア語スペイン語ポルトガル語ソマリア語、アルバニア語、チェコ語、などなど・・・。

 

仕事を始めて1週間も経った頃、HRマネージャーから再び呼び出され、「この仕事が終わったら、別のroleで正式にスタッフにならないか」との打診が!公には募集されていない職種で、out of hour(Night Shiftも含まれる)の業務であることから私も迷いましたが、交渉の結果週末の日中だけ働くことに落ち着き、この仕事を受けることに。

 

完っ全なるコネ入社です!!

 

以前インタビューを受けた(落ちた)ということを理由に、インタビューもすっ飛ばし、高速で入社が決まりました。

 

新しい仕事内容は、DV被害者の女性・子供達が避難しているシェルターで、生活のサポートをするお仕事です。待ちに待ったフロント職!!!実際にクライアントと触れ合うのはやはりやりがいがあります。彼女たちが少しでもハッピーになれるよう・・精進していきます。

 

 

 

 

 

映画: City of Ghost

良く拝見している方のブログで、「観た方が良い」と紹介されていたため、アマゾンUKのプライムで見ました。

 

映画の残虐なシーンがものすごく苦手な私ですが、恐ろしいISISの映像なども含まれるこのドキュメンタリーはフィクションではなく、リアル。しかも現在進行形の話であって、過去の歴史ではないところが恐ろしい。

 

でも、眼をつぶらずに拝見しました。命をかけて撮影した映像を国際社会に向けて発信している彼らの映像を、一般人の私が観ることもひとつの義務ではないかと思われました。

 


City of Ghosts - Official Trailer I HD I IFC Films & Amazon Studios

現代イギリスにおける「人身取引」とは

ヒューマントラフィッキング: 人身売買、人身取引のこと。

イギリスではModern-day Slaveryという言葉で語られる事も多いこの問題。英政府のレポートは、Modern slaveryについて下記のように説明している。

Modern slavery is an umbrella term that covers the offences of human trafficking and slavery, servitude and forced or compulsory labour. 

(筆者訳:Modern slaveryとは、人身取引、奴隷、隷属化、強制労働などの犯罪を包括的に意味する言葉)

もちろん現代では奴隷制度は国際法で禁じられているわけだが、経済的な理由から合法あるいは不法に入国した移民の多いこの国では、未だに移民らが奴隷のように扱われ人権を侵害されているケースが後を絶たない。

そのケースは、人身取引のオハコである売春目的に限らず、多岐にわたっている。例えば。

  • アフリカなどから、経済的な理由で親戚・友人を頼って入国。その親戚・友人からパスポートなどを取り上げられて家庭内奴隷のように扱われる。
  • 東欧などから、知り合いから良い仕事を紹介すると言われて、幼い子供たちをつれて入国。子ども手当を申請するように言われて申請するも、手当額は全て取り上げられ、強制的に売春させられる。
  • アイルランドから、トラフィッカーの手助けで船で密入国し、パスポートなどを取り上げられ、強制的に農業などの肉体労働をさせられる。*1

これらのケースが象徴するように、現代の人身取引においては、経済的な理由から多くの場合被害者は不法入国または滞在しているため、国内で不当に奴隷化されていても、周囲に助けを求めにくく、発見するのが難しい。

 

2013年時点でイギリス国内に10,000〜13,000人いると推測される潜在被害者。この問題に対し、イギリスでは、2015年にModern Slavery Actを立法化した。その取り締まりのために、2017年までに8.5百万ポンドの予算を警察に投じているとのこと。*2

実際、私がボランティアとして働いているNPOも、こういった取り組みの一端を担っている。問題の性格上、警察と緊密に連携をとって、被害者は警察から紹介されてくるパターンが多いのだ。

先週一緒にランチを食べていた、ヒューマントラフィッキング担当のヤスミンは、「私のポジションは、警察からfundされているんだよね」と言っていた。おそらく8.5百万ポンドのうちの幾ばくかが彼女の収入源になっているのだろう。

 

人身取引被害者は、多くの場合移民であるわけだが、中にはイギリス人もいるという。ヤスミンに聞いてみると、「こないだのケースでは、農場で働いていた人からの密告でイギリス人男性が強制労働されていたんだけど、その被害者はまた農場に戻ってしまったんだよね」という。

ほとんどの被害者は助けを求めている(と信じている)としても、中にはその閉鎖された環境に慣れてしまって顕在化しないケースもあるのだろう。このあたりは、愛する人が犯罪者となるドメスティックアビューズとも似て複雑な問題だ。。

 

イギリスNPOにてボランティアを始める

無事に修士を取って、日本人留学生は学歴をひっさげてまずは日本で就職、というのが王道なところだが、私は夫の仕事の都合でしばらく在英しなければならず、現段階まで職をみつけられていない。

 

外国人・関連経験なし・語学力不足・コネ不足、となればどんなにがんばって書いたアプリケーションも通るわけないんだな〜、と痛感し、まずはやってみようの精神でボランティア活動をはじめることに。

 

でも!このボランティアのポジションすら、見つけるの、苦労しました。

常にボランティアは募集してまーす、ってホームページに書いてあっても、実際はあまり仕事がなかったりする。運良く3つ目の団体で面接に呼ばれ、それをクリアして、ボランティアのプールリストに載る。さらに1ヶ月ほどしてから、リサーチの経験を買われて(?)バックオフィスに配属が決まった。

 

この組織は、政府の公認を受けながら事業を行っているきちんとした団体で、とくにマイノリティ女性にフォーカスしてあらゆる形のDV(家庭内暴力)やHuman Trafficking(人身売買、人身取引)被害者を支援するサービスを提供している。希望していた難民・移民支援のエリアで事業展開している団体だ。

 

今のところ数ヶ月経つが、最終的にはコンプラ部門のマネージャーのアシスタントと、パブリシティ・プロモーション担当者のアシスタントを兼務するというところで落ち着いた。ジョブ・ディスクリプションがあるわけではないので、ここまで手探り!

 

コンプラのボスはケニア出身、みんなからもめっちゃ頼りにされているヘリダ。とってもいい上司で、最初の配属としてはラッキー!と思う。

 

というわけで、これからはマジメな読書日記以外にリアルの日記もレポートしていきます。

日本の安全神話と、犯罪と差別と

最近、いよいよ英語を読むのに疲れてしまい、日本語の本を大量取り寄せしてウキウキ読書。そのうちの一冊ですが、個人的にとても面白かったものです。

 

安全神話崩壊のパラドックス―治安の法社会学

安全神話崩壊のパラドックス―治安の法社会学

 

 「安全神話」なんていうフワフワしたお題について、実証的に、はたまた理念的に、欧米との比較も交えながら、多角的に丁寧に説明していただき、厚みのある1冊ながら勢い1日で読了しました。こうしたフワフワしたテーマこそ、例えば、一方に統計や経済学、他方に歴史文化の地域研究などだけでは解決し難いテーマであり、社会学の職人芸なのではないかという気がします。

 

本書では、「日本は安全な国」であったのに最近そうではないとされがちである理由として、決して実際に犯罪数が増えているとか、凶悪化しているという話ではないといいます。そうではなく、伝統的日本社会では、大多数の一般人が暮らす「日常」と統制サイドと犯罪者たちが暮らす「非日常」の世界がほぼ切り離され共存してきたのだが、その境界が崩壊していることではないかと。さまざまな「境界」が崩れてきている例としては、例えば繁華街に多かった犯罪の住宅地への拡大、「夜半」に多かった犯罪が「日中」に頻出することなどがあります。そして統制サイド・犯罪者間のウエットな人間関係が防犯に果たしていた役割は大きかったが、近代化や「中途半端な」西洋個人主義の取り入れ、すなわち犯罪に対する態度として「馴れ合い」や「赦し」を重視する従来の傾向から、欧米的な「正当防衛」重視の文化へ移行する中で、それが崩れてきているとされています。

 

気になった点として、犯罪にはいわゆる人種差別がつきものであり、能力があるのに差別されたものが、自己実現する場としての犯罪組織というものがあるといいます。無論、差別された者があまねく犯罪に手を染めるなんてことはありませんが、差別と犯罪の関係は万国共通。そしてタブー視されがちである事も万国共通であると。そこで思い出したのは、FacebookのCEOザッカーバーグ氏も、読んで影響を受けた1冊と言っていたとかいなかったとかいうコチラの本。

 

The New Jim Crow: Mass Incarceration in the Age of Colorblindness

The New Jim Crow: Mass Incarceration in the Age of Colorblindness

 

著者も言及しておりましたが、アメリカでは犯罪といえば人種差別問題とニアリーイコール。この本では、いかに多くの黒人が刑務所に繋がれ、また犯罪者とされることで合法的に人権を剥奪されているかについて書かれています。合法的に人権を剥奪というのは、アメリカ憲法の修正13条において、すべての人間は平等である、ただし、犯罪者をのぞく、という但し書きがあり、これがまさに全てを正当化してしまっているということです。文章を読むのがおっくうな方は、同様の内容を映画で見ることもできます。

 

youtu.be

 

これを見ると、日本と米国では犯罪の統制システムに大きな差があると考えさせられます。アメリカの「平等社会」のためにというお題目を盾にした刑務所の裏の役割に対して、日本の、いわば「ヤクザが犯罪者予備軍の受け皿になる」システムが素晴らしいと言うつもりはありません。しかし、著者が言うように、「安全」確保のための共同体の大切さは認められるべきであるし、西洋型の人権擁護を神格化してしまうべきではないという議論になるほどと思わざるを得ませんでした。